2010年2月4日木曜日
留学趣意書
日本生活協同組合連合会に提出した「留学趣意書」の内容です。
「 筆者の大学学部生の時の研究課題は、1930年代のスペインにおける無政府主義の実践についてである。アナーキスト達の行った革命には、農村を一つの共同体として経済を行おうとする試みや、労働者が自分たち自身で会社の運営を行おうとする試みがあった。その中でも労働組合に関心を持ち、特にカタルーニャのバルセロナで行われた産業集産化の経緯について文献整理を行った。その際、1930年代のアナーキスト達が叫んだ「平等」、「自主管理」「協働」などのキーワードが、現在においても、NPO・NGO等の組織で掲げられていることから、連帯経済というものに興味を抱いた。
また、2008年に端を発した世界不況は、極端な市場中心の資本主義の限界を示していると考えられる。資本主義の全てを否定する訳ではないが、経済的弱者がとことん搾取されるこの状況は、肝心の労働力という意味の資本を劣化・摩耗するだけだと言えよう。資本主義は資本の再生産を軽んじて、単純に消費に走っている。そうした楽観的な態度が、この度の世界不況に端を発する様々な社会問題で明らかになっている。このような現在だからこそ、オルタナティヴな経済のあり方を模索していく必要がある。
こうした現状の中、現在様々なところで提起されている地域の問題、福祉の問題、労働の意味の回復といった諸問題に対し、協同組合運動は一つの解としての可能性を持っていると筆者は考えている。
しかし、日本における協同組合運動の現状は、あまり芳しいとは言えない状況にある。
班型共同購入事業の衰退や、生協ブランドの信頼を低下させるようないくつかの事件は勿論その大きな原因だが、協同組合運動に法的な制限が設けられていることもその原因の一つにふくまれるのではないだろうか。その制限のいくつかは先年の法改正で改善したとはいえ、筆者は業種別に協働組合法を定めている現行の法体系に対し、疑問を持っている。
業種の違いを超えた協同組合の合同に対して、現行の法体系ではそれに即した認可を与えることが出来ない。また、生協を支える運動から生まれた労働の形、ワーカーズ・コープ(あるいはワーカーズコレクティブ)が法的に認可を受けていない。また、法的に協同組合が生産を行うことは認められていない。
こうした日本の法制度の遅れは、今後の協同組合運動にとって大きな障害となるだろう。協同組合を業種に限定せず、自分自身の手で生産することを可能とする総合的な協同組合を作ることが、今の協同組合運動には求められているのではないだろうか。
筆者の研究の目的は、こうした枠を超えた総合型の協同組合運動が、日本において実現することにある。
そこで、こうした総合型の生協の先例であり、成功例でもあるモンドラゴン協同組合に強く関心を引かれた。博士前期課程に入学を許されてからは、日本におけるモンドラゴンの文献を読み、またモンドラゴン協同組合がホームページに掲載している資料などに目を通してきたが、国が異なることもあり、実際に行って学んでみないと理解が出来ない部分や、その運動のダイナミズムを感じること・伝えることが難しいという事態に直面した。昨年語学留学した折にモンドラゴンの町へ実際に行ってみたが、その際も時間的制限があり、外から施設を眺めるだけに留まっている。
モンドラゴン協同組合は大学を持ち、筆者のもう一つの関心でもある教育にも力を注いでいる。同大学へ留学し協同組合経営を学び、直接モンドラゴンの協同組合運動に触れることによって、総合型協同組合運動の日本における理論の構築、及び運営のやり方、協同組合運動の精神をどう教育しているのかという点について、報告されたものを聞くだけではない生の知識が得られると確信している。
また、スペインをはじめとするEU各国の協同組合法の法体系を学ぶことで、日本における協同組合法改正の動きに寄与できればと考えている。」
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